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結局、人は「言葉」で動く(Que クリエーティブ・ディレクター 岡部将彦さん)

トヨタ自動車やソニー・インタラクティブエンタテインメントなど、ユニークなテレビCMのクリエイターとして知られる岡部将彦さん。ITを駆使したCM制作が主流となる中、岡部さんはアナログ的な「言葉の力」も大切にしているという。クライアントや消費者が抱いているモヤモヤした思いを言語化することで、メッセージをストレートに伝えられるからだ。混沌とした日常から核心を突く、強い言葉を紡ぎ出す発想法とは?

── 社名に込めた思いを教えてください。

「Que」とは「Question」の「Que」です。(ケセラセラ『Que Seŕa Seŕa』の「Que」でもあります。)経営学者のピーター・ドラッカーが「重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを見つけることである」と書いているように、クライアントにとっての本当の課題とは何なのかを一緒に探しましょうという思いを込めています。同時に自らの仕事についても、「これで本当によかったのだろうか」と、絶えず問いながら進化していこうという会社の姿勢も重ねています。

── 名古屋での仕事が長かったようですね。

2000年に電通に入社し、名古屋市にある中部支社に配属されました。東京に比べ、組織が小さく、広告にかけられる予算も限られていましたが、そのぶん幅広い分野の仕事をまかせてもらい、今から考えると、貴重な経験ができたと思っています。

入社10年を超えたころ、トヨタの「アクア」というハイブリッド自動車の広告企画を担当。それがきっかけで、東京での仕事が増え、14年に東京本社に異動しました。トヨタに加え、プレイステーションやスクウェア・エニックスのソーシャルゲーム「星のドラゴンクエスト」の広告も手がけています。

少し毛色の違ったところでは、「マキシマム ザ ホルモン」というバンドの映像や企画の仕事もお手伝いしています。また、現在進行形で、飲料メーカーさんの広告も制作中です。17年に独立して、広告制作に加えて事業コンサル、コンテンツ制作の会社を仲間たちと始めました。

── アクアのCMをはじめ、手がける商品の強みを明確に伝える手法が注目されました。

アクアのCMは11年から手がけていますが、14年になると、軽自動車が燃費をどんどん伸ばし始め、ハイブリッド車に並んで、追い越すぐらいの勢いだったんです。そこで、アクアの強みってなんだろうって、あらためて考えてみたわけです。その時、軽自動車って高速道路であまり見かけないなって思ったんです。つまり、遠出する場合、ハイブリッド車や普通車の方に分があるんじゃないかと気づいたんですね。

それだったら、車での遠出を描いたCMを作ったらどうだろうと思ったわけです。でも、物理的に遠くに出かける映像だけではCMとして弱い。日本人にとって遠出って何だろうと考え、日本人が最も旅をしているのはゲームの中なんじゃないかという結論に至りました。そこで、「ドラゴンクエスト」や「モンスターハンター」のゲーム音楽を使ったテレビCMを作ったんです。

── この時は、ネットを通じたCMの拡散も意識していたようですね。

サブカルチャーの要素を取り入れ、こういう内容ならネットの人たちにも喜んでもらえるよねといった仕掛けを意識して作りました。今だと「いかにバズらせるか」というのは当たり前ですが、当時テレビCMとしては新しかったと思っています。CM中はスマホを見ているのが当たり前の中、聴き覚えのあるゲームの音楽だと思って顔を上げたら自動車のCMだった、というように耳から入るコミュニケーションを大事にしようと考えたわけです。

── サブカルチャーを取り入れた広告は他にもありますか。

特別、サブカルを意識したわけではありませんが、トヨタでは「C-HR」というSUV(スポーツ用多目的車)の仕事も手がけました。チーフエンジニアが走りとデザインのかっこいい車を作るとおっしゃっていましたので、僕らも、その車がどこを走っていたら、かっこいいんだろうって考えて作ったCMです。中心的な購入層である30~40代の人たちが子供時代から、純粋に「かっこいい」と思った乗り物はすべて「コンテンツ」の中にあるのではないかと気付き、それらの世界の中をこの車に走らせてみようと思ったわけです。

例えば「ストリートファイターⅡ」というゲームの中を走らせたり、タカラトミーさんに作っていただいたC-HRのトミカを高さ7メートルの巨大なコースで走らせたり、さらに原哲夫先生の「北斗の拳」や大友克洋先生の描くネオ東京の世界を駆け抜けていくといった「かつての男の子」の夢が盛りだくさんの内容にしました。

── 他にはどのような広告を手がけていますか。

もう一つメインでやっているのが、プレイステーションです。10年から継続してやっています。ソニー・インタラクティブエンタテインメントが山田孝之さんとCM出演の契約をしていて、最近だとPS4用の人気ゲームソフト「モンスターハンター:ワールド」のCMを制作しました。

── PSの広告制作の過程で「言葉」の大切さにあらためて気づいたそうですね。

2016年末に流れたPS4のテレビCMを作っていてそう思いました。大杉漣さんが演じる総理大臣に、山田さん演じる記者がPS4に関する最新情報を伝え、最後に「迷うのは欲しいからです」と大声で話しかけるんです。その台詞が視聴者に届いたという手ごたえがありました。

PS4って欲しいんだけど、今じゃないんだよねっていう人が実は多い。欲しいものランキングの2位とか3位にランクしているのに、なかなか購入の踏ん切りがつかない。そこで「迷うのは欲しいからだ」と、消費者が漠然と思っていることを言葉にして投げかけてみたんです。そうしたら、高めに設定していた販売目標をクリアすることができたんです。

── 「言葉の力」で消費者を動かすことができると。

みんながモヤモヤと思っていることをコピーで言語化することで、「私が思っていることってこういうことだったんだ!」「私はこういうのが欲しかったんだ!」と気づいてもらえる。それで消費者が動いて、商品やサービスを買ってくれる。これこそが広告の仕事の醍醐味だと思います。

── ほかにも「言葉の力」を実感した広告はありますか。

最近の仕事ですが、モンスターハンター:ワールドのテレビCMでは、「また夢中になれる毎日がやってくる」というコピーを書きました。いわゆる「モンハン」シリーズは2010年頃に一大ブームを巻き起こしました。その時のユーザーがこのCMを機に戻ってきてくれて、日本では発売初日から3日間で120万本売れました。最初のブームの時に中学生位だったファンが、モンハンに夢中になっていた時の感覚を、このコピーで思い出して帰ってきたという声がたくさんあったのです。

きっと、このCMが「モンハンが出るよ」というニュースだけだと弱かったと思います。昔、楽しく遊んでいた思い出をくすぐってあげることで、お客さんが反応してくれる。20年近く広告の仕事をやっていて、コピーって大事なんだなってあらためて気づかされました。

── 広告の企画でも言葉探しから入っていくのですか。

どちらかというとコピーから書いていく方が多いですね。この商品って「何に気がついてもらえたら売れるだろう」と考えてコピーを書いてみます。それからCMのストーリーを考えていきます。最初に、ストーリー作りから入ってしまうと、商品の魅力がストレートに伝わらないものになることが多いんです。

例えば、直近の仕事ですが「ほっともっと」のCM。「やっぱりお弁当屋さんのおべんとうはおいしい」というコピーから、CMをはじめすべてのコミュニケーションを設計しています。

── テレビCMでは決まった時間の中にたくさんの情報を盛り込み、強いメッセージを発信しなければなりませんね。

広告は一種の「借り物競走」。テレビCMだと15秒とか30秒の枠内で伝えたい情報をギュッと詰め込みます。例えば、有名タレントが出演したら、映画やテレビの出演作を知っているという前提で作っているわけです。堺雅人さんの出ているCMがあれば、人気だったテレビドラマの「半沢直樹」のイメージがあって、上司に対してもの申す実直な会社員というイメージを共有しているわけですね。そこでCMを作る時は、その堺さん像を借りるわけです。ですから、日本のCMは海外の人に理解されにくいとも言われるわけですが。

── 言葉を武器に広告の仕事をしていこうと思ったきっかけは。

学生の時にテレビ番組で映画の「惹句(じゃっく)」と言われるキャッチコピーを専門に書いている人の特集を見たことがあるんです。その中で一言で映画を言い表して、見たいと思わせる言葉の力に感心した記憶があります。自分にもこんな仕事ができたらと思っていました。

また、名古屋で広告の仕事を始めたことが大きい。何と言っても名古屋では広告にかけられる予算が少ないわけです。有名なタレントの出演は難しいし、大がかりなセットも組めない。結局、お金がかからず、自由に扱える「言葉」が残ったという次第です。

先輩からは「一行のコピーと商品名だけで広告は作れる」とよく言われてました。駆け出しの頃はピンとこなかったのですが、今なら広告の最小単位でもあるコピーの大切さが理解できます。というより、結局最後に人は「言葉」で動くんだなと思っています。

── 名古屋ではラジオCMも数多く手がけていますね。

名古屋を中心とした東海地方では車で通勤する人も多く、運転中に聞くラジオCMのニーズも多いんです。ただし、ラジオCMは音声で瞬時に流れていくので、最初から注意して聞いていないとメッセージが伝わりにくい。そこで、どこから聞いても面白いCMにできないか、試行錯誤を重ねました。

例えば、春日井製菓ののど飴のラジオCMでは、演歌歌手の坂本冬美さんにインターホンのチャイムや鳩時計、そしてレーシングカーなどの効果音をお願いしました。「もしも、坂本冬美がレーシングカーだったら」という設定で、コミカルな雰囲気で車のエンジン音をうなってもらうという内容です。こちらは言葉というよりは音にフォーカスしていますが、ラジオCMを数多く手がけたことも、言葉について考えるきっかけになったかもしれません。

── 広告の制作だけでなく、ベンチャー企業への出資にも取り組んでいるそうですね。

ここでも実は言語化がキーになっています。

クライアントの社長と会っていると、言いたいことがあり過ぎて、考えがまとまらず、モヤモヤしている方が結構いるんですね。「どうして、私のやりたいことが世の中に伝わらないんだ!?」と。話をうかがって、そのモヤモヤした思いを言語化して伝えるのが私たちの仕事でもあります。その延長線上で、可能性を秘めたベンチャー企業の経営者の方たちと、経営の方向性を一緒に見つけて、出資していくビジネスをはじめています。

── 広告媒体としての新聞についてどうお考えですか。

新聞広告は、全国の都道府県別に47種類のドラクエモンスターとコラボさせたトヨタアクアの広告などを手掛けています。実はSNSなどで新聞広告が話題になることってとても多いんです。

私自身が思っている新聞の一番の強みは、媒体に日付があることだと思います。例えば、阪神優勝の翌日の新聞なんて注目が集まりますよね。以前その日に出稿した星野仙一さんの新聞広告がとても話題になりましたよね。

最近はバレンタインデーにチョコレートメーカーが出した「義理チョコをやめよう」という新聞広告がSNSで話題になっていました。世間からの信頼が厚い新聞という媒体は、企業が世の中に対して強いメッセージを放つには最適な場所だと思っています。

今は、企業が社会の課題や時代の空気に対してどう取り組んでいくかが非常に問われ注目される時代です。だからこそ、広告の出る日付やタイミングと、世の中がモヤモヤと思っていることを「よくぞ言ってくれた」という企業のメッセージが組み合わさると、ものすごく強い広告になる。そういうことのできるメディアは、やはり新聞しかないと思って改めて注目しています。

Masahiko Okabe

1978年生まれ。関西大学社会学部卒業。2000年、電通入社。「Que」設立に参加。主な仕事にトヨタ自動車「AQUA」「MIRAI」や、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのプレイステーションなど。05年にTCC最高新人賞やACCコピー賞などを受賞。

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